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中学1年 社会科における地図太郎Liteを利用した授業実践例
2023.06.22
立命館宇治中学校・高等学校 社会科 大井 喜代 先生
2023年6月 取材
「未来のグローバルリーダー育成」を教育目標にかかげ、国際教育に力を入れる立命館宇治中学校・高等学校。グローバル化の進む世界において、高い志とチャレンジ精神を持った人、責任感を持って行動できる人を育てるなど、学校全体で育成すべき「理想の人間像」として国際バカロレア機構が提唱する「Learner Profile (学習者像)」を採用する、立命館学園の附属校の中でも特に国際性に特化したコースやカリキュラムを持った学校です。
URL:https://www.ritsumei.ac.jp/uji/
今回取材したのは、中学校で社会科をご担当されている大井喜代先生です。
今年の2月から地図太郎Lite for Educationを導入いただき、中学1年「社会科」の授業で利用いただいています。
大井先生は一般財団法人日本私学教育研究所の令和4年度委託研究員としても活動されています。今年の3月18日には「研究成果報告会」において「ICTを活用して、地理的観点から歴史を学ぶ授業を構築する」というテーマで地形や事象の位置関係から歴史を考える授業を構築し、その一環で地図太郎Liteを利用した授業実践事例の発表をしておられます。
その授業の内容や生徒の反応、中学1年生という学年での利用するうえでの難しさや、意外な発見についても教えていただきました。また、実際に利用した6名の生徒さんの声も掲載しています。
- 研究テーマと概要
研究テーマ概要(研究成果報告会 発表資料概要版)※クリックでPDFが開きます。
- 目次
地図太郎Liteの授業での利用方法と利用したきっかけ
―――地図太郎Liteを利用しようと思ったきっかけについて教えて下さい。
GIS(地理情報システム)の活用は、私自身も含め、多くが文系学部出身の社会科教員にとって非常に難易度が高いという問題を抱えているため、インターネットでGISの初心者が使用しやすいツールを探していました。地図太郎Liteはマニュアルが分かりやすく、今昔マップや色別標高図、その他にも『データブックオブザワールド』などのデータも多く搭載されており、日本地誌・世界地誌・公民など幅広く活用できると思いました。
―――地図太郎Liteをどのよう授業で、どのように活用しましたか。
中学1年生の地理担当時に、授業で日本の水運について扱いました。特に本校の立地する宇治を含め、畿内は淀川や宇治川など水運で栄えた地域であり、生徒も興味を持ちやすいと考えました。
まずGISに慣れるため、近畿の地誌を題材にしました。「巨椋池の昔と今」をテーマにして、地図太郎Liteで現在の地図に今昔マップと色別標高図を重ね合わせて学校周辺の様子を解説しました。また大阪市や淀川周辺の土地条件図と今昔マップを重ね合わせ、自然堤防沿いに村落が形成されていることや大阪城の立地についても学習しました。
次に、生徒たちがそれぞれ興味のある遺跡や歴史的建造物(神社、寺、城など)を選び、地図太郎Liteで地形の特徴を調べ、その遺跡や歴史的建造物がその場所に立地している理由について考察内容をグループ内で発表しました。地形の特徴を調べる際には、今昔マップや色別標高図、自身の取り込んだ写真や作成したイラストを重ね合わせた画像を作成し、発表の際にも活用しました。
△実際の授業で利用した課題シート
△実際に生徒が作成した地図太郎Liteの発表資料
(調べた箇所に点データを作成し、点データに調べた内容をまとめた画像をリンクして画面に表示させています。また、背景地図を重ねて地形の説明をしています。)
地図太郎Liteを利用した生徒の反応、学習効果
―――地図太郎Liteを使用した生徒の反応はいかがでしょうか?
土地の高低などから立地の説明を行った生徒がおり、非常に分かりやすく発表ができていました。その発表を聴くことで、お互いに貴重な学びとなったことが他の生徒の感想文から読み取れました。また「Google Earthや地理院地図ではできない高低差の表示や、昔の川の流路なども重ね合わせて見られるため、歴史的な背景を説明しやすかった」と話す生徒もいました。
ファイルづくりに手間取る生徒もいましたが、様々なテーマの地図を見ることで地理そのものに関心を持つきっかけになったようです。「地理アプリに興味を持った」「地理アプリは他にもこんなものを知っています」と話してくれる生徒もいて、GISへの興味が深まったことが分かりました。
―――先生からみて生徒が使っている様子で気付いた変化はありますか?
最初は「難しい」という感想が多かったのですが、一方で「分かった!」「なるほどね」という声も上がり、お互いに教え合いながら「新たなツール」に前向きに挑戦しようとする生徒が増えてきました。「挑戦する姿勢」が結果につながることを学ぶこともできたと思います。
―――先生から見た地図太郎Liteの学習効果について教えてください。
「必要な地図を重ねてそこから考察する」という、GISの基本を習得するのに効果的であると思います。また地理のみでなく歴史など科目をまたいで学ぶこと大切さ、何より面白さを知ってもらうことができました。
△実際の授業の様子
今後の地図太郎Liteの活用方法
―――今後、地図太郎 Liteは中学校において、どのような授業で使っていけそうでしょうか?
地域の抱える問題の解決方法を考える上で、地形や自然環境など系統地理の観点と、地域が発展してきた経緯や他地域との交流について歴史的な観点で考察することは必要不可欠だと考えています。地理の授業のみならず、今後の探究の授業などでも広く活用できると思いました。
―――地図太郎 Lite の高校での利用や GIS に期待することを教えてください。
高校地理で、世界の人口分布と自然地形の関係、気候と農業など、様々な要因が関係して現在の世界が成り立っていることを分かりやすく解説するのに適しています。
GISを活用することで、世界の各地域が抱える諸問題について、多角的な視点から解決策を見出すことができます。豊かな発想力で明るい未来を作り上げる人材が更に増えていくことを期待しています。
地図太郎Liteを利用した生徒の感想
―――どんな発表をしましたか?どんなテーマを調べ、何が分かりましたか?
寺田さん:大阪城について調べました。地図太郎Liteでは、大阪城あたりの昔の様子や、標高などを中心に調べていました。アプリを通してどうして大阪城がその場所に建てられたのか昔がどのような場所だったかがわかりました。
山下さん:自分の地域の近くにある遺跡、橿原神宮についてその周りの地形などを調べ、なぜそこに建てられたのかを考えました。奈良県橿原市ではほかの地域に比べて周りが山に囲まれていて災害が起きにくい地形だから建てられたということがわかりました。
福間さん:私は平等院鳳凰堂をテーマとして、平等院鳳凰堂の場所の地形から、なぜその場所にあるのかについて調べました。その結果、山の中にある平等院鳳凰堂は仏教を学ぶには、最適という理由があることが分かりました。
―――地図太郎 Lite に触れてみて率直にどんな感想をもちましたか?
山下さん:地図太郎Liteを使ってみて、最初はどんな操作をしたらいいか分からなかったですが、使っていくにつれて説明などもわかりやすく書かれていたので簡単に使っていくことが出来ました。
片桐さん:複数の情報をいちいち調べないで、一気に処理して調べ学習が出来てとても便利でした。
福間さん:扱いは難しかったけど、うまく使いこなせばとても便利なアプリだと思いました。
岩田さん:色々な地図を重ねてみることで、新たな発見ができて、現在の地形と昔の地図を比較して、変化していることも分かりやすいと思いました。
―――地図太郎 Lite は他のWEB地図サイトと比べどんなところが良かったですか?
寺田さん:地図太郎Lite独自のレイヤがたくさんあって、特に、昔の様子が見られる地図(今昔マップ)がお気に入りで、いろんなところのいろんな時代が見られて、すごくおもしろいです。他の地図サイトにはないので、すごく使っていて楽しかったです。
岩田さん:地図や調べた内容を重ねて表示して、オリジナルの地図を作成することができ、自分が伝えたいことを分かりやすく表現できるところが良かったです。
福間さん:昔の地形と比べたり、必要とする表記だけに絞ることが出来たりするところです。
Tさん:他の地図サイトと比べて、色々なことができ、地図の種類もはるかに豊富で良かったです。
―――使いやすさについてはどうでしたか?
寺田さん:とても使いやすいと思いました。初めて使う人でも、すぐ使い始められると思います。
山下さん:使いやすさは他の地図サイトに比べていろいろな機能があり、どれを押したらよいのか分かりづらいところもありましたが、わかったらすごく使いやすかったです。
片桐さん:写真(航空写真)だけではなく色分けのところもあり見てすぐにわかるので使いやすかったです。
―――どのくらいの時間で使えるようになりましたか?
寺田さん:はじめての授業で使えるようになりました。全部がわかりやすくて、すぐなじめると思います。
山下さん:初回授業では使えなかった部分が多くありましたが二回目や三回目となってくるとわかる内容が増えていきました。
Tさん:先生に解説して頂いて、20分くらいで使えるようになりました。
△実際の授業での発表の様子
ご協力ありがとうございました。