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地理総合でのGIS活用のポイントと地図太郎Liteへの期待

2021.04.07

品川女子学院 河合 豊明 先生(社会科) 2020年12月9日インタビュー 

品川女子学院 河合 豊明 先生(社会科) 2020年12月9日インタビュー

 

「自ら考え、自らを表現し、自らを律する」を教育理念とする品川女子学院で社会科(地理)をご担当されている河合豊明先生。

河合先生は兼ねてより地理学習におけるGISの必要性についての研究や発表も多数されており、コロナ禍の中でもGISを活用したオンライン授業実施など「学びを止めない」工夫を最前線で実践されておられます。昨年11月からは地図太郎Lite for Educationも導入いただきました。

 

今回は、河合先生に2022年度から始まる地理総合への期待とGISとの関り、地図太郎Liteを利用し感じたことなど教えていただきました。

 

1:「地理総合」必修化への期待

2:「地理総合」に必要な「GIS」とは

3:「地図太郎Lite for Education」を利用してみて

4:これからの地理教育とGISに求められるもの  

 

「地理総合」必修化への期待

―――地理総合が必修になりますが、先生の想いや期待についてお聞かせください。  

地理総合が必修になるというところに関しては、地理を教える身としてうれしいと思う反面、懸念することもあります。 これまでは中学以降、地理を習うことがないという子たちが圧倒的に多かったのですが、今後は高校において、歴史・公民の学習をした上で地理を勉強する機会があることには大きな意義を感じています。 高校では日常生活の地理的事象に対する「見方・考え方」を養います。これらは小学校、中学校では習いきれない、扱いきれない部分ではないかと思います。 一方、懸念としては、地理の先生が不足していることが挙げられます。ほかの教科の先生がどう授業を教えていくか社会科全体として考えていかねばなりません。

 

―――中学地理と高校地理の内容の違いは何でしょうか?

中学校の地理の場合、身近な地域や世界のことを学習し、様々な地域があるということを知ります。現在の高校地理では、一般的な知識に偏重した一つの見方で終わってしまいがちですが、実際は、教科書に載っていることだけではなくて、自分で必要な情報を見つけ、それを踏まえながら、客観的に物事を比較することで違った部分を見出す視点が必要です。この部分を見つけられるのは恐らく高校生になってからではないかと考えています。

===高校の地理では自分から探し当てていくことや、自分と社会とのかかわりを見出す視点が大事ということですね。

 

―――地理総合や地理探究の登場で、暗記教科が増えるという心配がありますがどのようにお考えでしょうか?

 

地理総合や地理探究は、「世界の全てを暗記する。」のではなく、「地図を通していかに表現をするか。」を学ぶことであると思います。 「地図や図表・データを通し、表現のされ方から共通点や違いを見つけていくこと。」この課題を見つけるところまでが地理総合で、課題を掘り下げ解決していってみようというのが地理探究なのではないかと捉えています。

 

「地理総合」に必要な「GIS」とは

―――地理総合の学習指導要領には「GISの活用」について記載がありますが、近年のGIS環境の変化で感じたことはありますか?

 

地理総合が必修になると話が出た当時は、WEBブラウザで動くGIS(WEBGIS)があまりなく、ソフト版GISが主流でしたが、他教科とのバランスもありコンピュータ室への導入は不可能に近い状態でした。 その後、新指導要領開始が間近になり、多くのWEBGISが出てきたように思います。WEBGISはコンピュータからだけではなくて、生徒が持っているスマートフォンやタブレット端末からアクセス、操作できるという点で大きな意味があると感じています。

 

―――地理総合で必要なGISとはどんなものでしょうか?

 

地理総合でのGISは、複雑な操作をして何か分析するのではなく、まず、紙地図では手間がかかる作業も、GISでは簡単にできることを知ること。その次に、複数の地図を重ね合わせて「見る」ことがポイントになると思います。 一方、地理探究に関しては「見る」だけでなく、もう少し複雑で、データをダウンロードし、GISにアップロードして、自分で重ね合わせていくことが必要になってきます。 データとデータを重ね合わせると何がわかるか、というところが地理探究のスタート、あるいは地理総合のゴールになるのではないかと思います。 

 

===見るGISと自分で主体的に使いこなし、答えを導き出すという2段階のGISの活用が必要ということですね。

 

 

「地図太郎Lite for Education」を利用してみて

 

―――昨年の11月から導入していただいてから日は浅いですが、地図太郎Liteを利用してみた率直な感想をお聞かせください。

 

まず、「地図そのものがきれいだな」とすごく思いました。そして、「教科書や資料集では難しかった、「地図と地図の重ね合わせ」がいとも簡単にできてしまう」ので、生徒のもっと使ってみたいという感じが見て取れます。

 

―――授業で利用いただいたとのことですが、生徒さんたちに操作させてみていかがでしたか?

 

中学生、高校生は、機械がどんどん変わっていくことに正直慣れているといつも見ていて思います。生徒が教えてくれるというのもよくありますし、生徒は積極的に利用してくれるのではないでしょうか。

 

―――地図太郎Liteを今後の地理総合・地理探究の授業に活用できそうでしょうか?

 

地図太郎Liteでは教科書に載っていない図版やデータブックを開かないとわからないようなところまで見ることができます。 例えば統計について教科書では、第1位から第5位までしか載っていないものが、地図太郎Liteでは最後まで見ることができます。「第1位がダントツで、第2位、第3位までは多いが、第4位以下は差がなく少ないことがわかったり、また、第20位まで状況を追うこともできます。」、その上でほかの地図やデータと重ね合わせ、「このデータは山地、山脈と関係ある」など、何かのデータを地図に足して、今度は何かを削ってみる。また、あるデータに絞ってみることで相違点や共通点を「生徒自身が見つけていく」ところにつながります。そういう意味では地図太郎Liteにすごく期待しています。

 

===主要な統計の順位は(世界各国分)全部載せてありますので、その中から何か発見していただけるとうれしいです。

 

―――「教科書に載っていない」情報も必要なのはなぜでしょうか?

 

例えば、授業において、一つ前の章で取り扱った全く繋がりがないと思えるような事柄にも実は関係性が有り、情報として利用できることを先生がしてあげないと、生徒は、いろいろなデータが繋がっていることに気づけません。結果、断片的に事柄を覚えてしまうことが地理の落とし穴なのではないかと思います。 教科書の章を越え、また全世界に飛び、物事の繋がりに気づけるのは地理だけでしかできない醍醐味でもあります。このような地理の面白さをGISで扱っていけたらよいのではないでしょうか。

 

===GISならではの、気づきができるようなテーマやデータがあるといいということですね。データの利活用方法などご提示するところまで作り手である私達がやるべきことだと考えています。

 

―――地図太郎Lite for Educationの様なコンセプトでデータが揃っていて、ボタンひとつですぐ使えるWEBGISは他にないかなと思うのですが、ご存知のものはありますか?

  地図太郎Liteのような、テーマを選んだら地図が全部出るというコンセプトのものは全くないです。  無償のものであれば組み合わせて使うという考えになります。例えば、防災に関して地理院地図はものすごく使えるものだと思うのですが、グローバルな部分は何かほかのものを使うということになってしまいます。 その点、地図太郎Liteは今のところ防災に関してもグローバルな部分に関しても、ひとつで対応できるので、十分ではないかと思います。 

 

―――地図太郎Liteに今後どのようなことを期待されますか?

  現在、地図太郎Liteでは主に地理総合というところにフォーカスされ、防災に関するものと、国際的に関するデータが一通り揃えられているという印象があります。今後、地理探究での利用となれば、地理を越えた分野の情報も積極的に追加し、新たな発見や気づきを与えられると良いと思います。

 

===WEBアプリですのでコンテンツについては皆さまのニーズも踏まえ随時更新・配信していきたいと思います。

 

 

 

これからの地理教育とGISに求められるもの

―――地理総合や地理探究ではどのようなスキルや物の見方・考え方が必要になるのでしょうか?

 

地理総合においては主に三つの柱(防災・国際理解(グローバル)・GIS)があるのではないかと見ています。まず、防災については自分の地域のことだけでなく、他の地域を比べること。次にグローバルでは、世界のある地域と自分たちが住んでいる地域がつながりを理解すること。最後にその防災やグローバルで必要となる視点を、GISを通してどのように見つけ、どのように自分で見極めること。これらのスキルが地理総合では必要になってくると思います。 それに対して地理探究では、地域を比較して見つけた課題に対し、一歩先に踏み出し、地域を取り巻いているもの全て(地形、文化、環境など)から、何をすべきか、どのような解決策を考えていくことができるかなど、実際に考え行動していくことが大切になります。

 

===高校3年間終え卒業すると、世の中で起こっているいろいろなことが他人事に思えなくなる。そんな思考を持った人たちがたくさん出てきそうですね。

 

―――今後GISが更に普及していくためには何が必要でしょうか?

 

今後、地理だけではなく、社会科全般を通してGISは様々な場面で活用できることをご理解いただくことが、とても大事なことに繋がってきます。タブレット端末やパソコンなど生徒数分導入されていない学校や、コンピュータルームもまだ十分に使えない、または、ネットワーク環境がまだ整っていない学校もまだたくさんあります。 地理の教員だけではなくて、社会科の先生方全員で、GISの必要性と利便性について声を上げることで、導入の推進が今以上に図れるのではないかと考えています。

 

===当社でも教科横断的に使えるコンテンツを今以上に増やしていきたいと思います。

 

―――本日はありがとうございました。

 

 

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