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小学5年生 社会の授業における地図太郎Liteを利用した授業実践例
2025.03.19
杉並区立天沼小学校 新宅 直人 先生
2025年3月 取材
杉並区立天沼小学校は、「よく考える子」「思いやりのある子」「たくましい子」を教育目標に掲げ、ICT教育に力を入れています。地域との連携が強く、イベントも多く開催され、開放的で自然を取り入れたデザインの校舎と校庭が特徴的です。
URL:https://www.suginami-school.ed.jp/amanuma_es/
今回インタビューしたのは、杉並区立天沼小学校で5年生の担任を務めている、新宅直人先生です。新宅先生は、ICTを活用した探究学習を積極的に推進し、児童の主体的な学びを支援しておられます。
また、授業実践例報告や授業アイディアの監修、さらにはNHK Eテレ「ズームジャパン」の製作協力も行っています。趣味はサイクリングだそうです。
取材前に5年生の社会科の授業を見学させていただきました。「様々な災害は国土の地形や気候とどのように関係しているのだろう」というテーマで、児童たちは地図太郎Liteを用いて災害の発生しやすい場所と地形や気候の関係性を調べ学習していました。
新宅先生の指導のもと、児童たちはみなのびのびと作業に取り組んでおり、その様子は非常に印象的でした。
取材では、小学校の授業で利活用する中で感じた便利さや課題について教えていただきました。
- 目次
地図太郎Liteの使用方法と工夫
―――地図太郎Liteをどのような授業で活用されましたか。
5年生の1学期には国土の特徴(日本の地形と気候)を学ぶ授業で活用しました。
例えば、山脈の位置や川の流れを確認したり、雨が多い地域を調べるために地図太郎Liteを使用し、各地の雨温図のデータも活用しました。また、米作りの授業では、世界の米の生産分布を見て、小麦の生産分布と比較することで、児童たちに興味を持たせることができました。
― ― ―今日の授業では、みんな雨温図を普通に出して見ていましたが、しっかり使い方を覚えていたのですね。
―――地図太郎 Lite を授業で使用する際の工夫について教えてください。
地図太郎Liteは情報量が多いため、小学校の授業では見てほしいものに制限をかける場面や、逆に自由に使わせる場面があり、そのまま使う場合、難しさもあります。しかし、地図太郎Liteでは簡単にCTLファイル※(表示したい地図をあらかじめ保存する機能)を作成でき、これを用いて児童に調べてもらうことができるため、非常に便利です。
児童の反応と学習効果
―――地図太郎 Lite の使用による児童の反応や学習効果について教えてください。
便利さは児童たちも最初から感じていたようです。もちろん操作の上で難しさや不便さもありますが、様々な地図を重ねたり、比べたり、拡大縮小して見ることができる点で、GISは他の教科書や資料集ではできない新鮮な体験を提供します。
地図太郎Liteを利用した授業では、児童の「物事を関連づける力」が特に向上していると感じます。
―――地図太郎 Lite の使用による児童の学習や表現に変化はありましたか?
地図太郎 Lite を使うことで、教科書や資料集では意見を言えなかった子どもたちが、自分の考えを地図表現で書けるようになりました。
例えば、昨年の6年生の授業では、地図太郎 Lite で調べた画面をキャプチャーし、そこに自分の考察を添える方法を取り入れました。この方法により、児童は他の視点から物事を考察し、社会科の能力資質や情報活用能力を高めることができます。
地図を組み合わせて表示させることも表現の一つであり、指導要領にある白地図に表現することに近いといえます。
―――これまでの授業で児童が特に興味を持ったテーマや主題図はありますか?
いくつかありますが、例えば「夜の地球」と「世界の発電所の分布」は非常に興味深いものでした。また、「世界の鉄道」も良かったです。
昨年行った6年生の「世界の課題を考える」という授業では、「PM2.5(大気汚染)」と「風向き」の組み合わせを使用しました。風がアニメーションで動くため、児童に非常に好評でした。これを応用して「海流」のデータも動くようになると良いですね。水産業はもちろん、現在注目されている海洋プラスチック汚染についても考えることができるのではないかと思います。
― ― ―大陸から偏西風で流れてくる様子がよくわかりますよね。海流のアニメーション化は確かに面白そうですので検討してみます。
地図太郎Liteの特徴や利点
―――地図太郎 Lite が他の教材やツールと比べて特に優れていると感じる点は何ですか?
地図太郎 Lite の特に優れている点として、児童が問いを発見する力を養えることが挙げられます。
例えば、特定の地域に特定の分布が見られる理由を自ら考え、発見することができます。
― ― ―今日の授業見学で、地図太郎 Lite を利用した児童がまとめの発表で結果の考察だけでなく、発見した疑問点や次の対策について発表しているのを見て感動しました。まさに探求の姿勢が見られました。
地図太郎 Lite は、グローバルな視点を養うのに有効です。国単位ではなく、全体がつながっていることを視覚的に理解でき、紙の資料集では得られないシームレスな視点を提供しています。児童が地図を通じて世界全体を捉える力を身につけることができるのは魅力です。
また、全体を俯瞰する視点と特定の地域に焦点を当てる視点を自由に切り替えられるのも特徴です。例えば、日本全体を見渡す情報と、関東地方など特定の地域にズームインする情報は異なります。この視点の切り替えも地図太郎 Lite の強みです。
地図太郎Liteの効果的な活用方法とその課題
―――小中学校での地図太郎 Liteの効果的な活用方法を教えてください。
小中学校では授業時間が短いため、毎回の授業に地図太郎 Liteを取り入れるのは難しいかもしれません。
しかし、単元のまとめや新しいテーマの追求に使うことで、効果的に活用できます。
例えば、日本の農業について学んだ後に、世界の農業についても調べるといった発展的・探究的な使い方が考えられます。プラス1時間程度で行うことで、学びが深まると思います。
特に、まとまった時間を確保してじっくり取り組むことで、児童が操作に慣れ、地図太郎 Liteを使いこなせるようになります。
― ― ―高校だと日常的に使えるかもしれませんが、小中学校では時間制約がありますから、小中学校での使い方としてはすごく良さそうですね。
―――地図太郎 Liteは社会科以外ではどのような授業で特に有効でしょうか?
地図太郎 Liteは、総合学習や環境問題、平和教育などの授業で非常に有効だと思います。
社会科の授業に限ると、3年生の地域学習ではGISの必要性が低く、4年生で東京都の話が出てくる頃にようやく使えるようになるかもしれません。
ただ、GISの利点や活用方法を広めるためには、その価値が教員に伝わることが重要です。GISの利点に気づけば、多くの先生方も効果的に活用できると思います。
地図太郎Liteを使うことで、児童たちがより深く学び、広い視野を持つことができればいいですね。
―――地図太郎 Liteの課題と今後の期待することは何ですか?
子どもたちからは色分け系の地図を重ねるのが難しいという声が聞こえています。特に、膨大な情報量の中から小学校の特定の単元に必要な情報を選び出す力や、そもそもの使い方を身につけることが課題となることがあります。これを見た先生が「ちょっと無理だな」と感じることもあるかもしれません。
― ― ―そのような課題に対して、どのようなサポートがあると良いとお考えですか?
まず、使いやすいガイドラインやチュートリアルがあると助かります。また、特定の単元に必要な情報を簡単に見つけられるフィルタリング機能が強化されると、授業準備の負担が軽減されると思います。
― ― ―学習テーマや活用フローもすでにありますが、より小中学校向けに使いやすい形に変えることも検討してみます。
―――本日はありがとうございました。これからも先生方のご意見を参考に、より使いやすい製品を提供していきたいと思います。
脚注※:表示したい主題図をあらかじめ作成し、CTL形式のファイルで保存することでいつでも誰でも同じ図を表示することができるようになります。